(27)「ベントリー・ビーバーのものがたり」:赤木かん子の「親子で読もう!今どきの絵本のおすすめコーナー」

今日の絵本は、
「ベントリー・ビーバーのものがたり」
(シャーマット作 ホーバン絵  のら書店  1993年)


ベントリー・ビーバーのものがたり - マージョリー・W. シャーマット, リリアン ホーバン, Marjorie Weinman Sharmat, Lillian Hoban, 掛川 恭子
ベントリー・ビーバーのものがたり - マージョリー・W. シャーマット, リリアン ホーバン, Marjorie Weinman Sharmat, Lillian Hoban, 掛川 恭子

幼年文学の形をしていますので、
音読してやっても30分くらいで読めるでしょう。

絵が地味なので、ほとんど有名にならなかった一冊ですが、
天才でもヒーローでもない、気立てのいいベントリー、という男の子が
ずっと好きだった幼なじみと結婚して一生懸命働き子どもを育て、
幸福に亡くなるまで、を描いた、
人生こうでなくちゃ!を絵に描いたような話で、
これが子どもに向かって書いた本?なのですが、

確かにこれは子どもに向かって書いた本、ではなく、
児童文学の手法をフルに活用して書いた本、でしょう。
大人の文学で書いたら、
とてもこうはシンプルに、真髄だけがまっすぐ伝わってくるようには書けないでしょうから。

そういうわけで、
リアルタイムの時代の子どもたちには、???だったと思われますが、
いまなら、いい話だねぇ、お母さん、としみじみする
5歳の男の子がいてもおかしくないなぁ、と思います。
それがいいか悪いかは別にして……。

欧米は、幼年文学でこういうことがいえる、と発見して突き進んだ結果、
一部、子どもにはわからない珠玉の幼年文学、というものを作り出してしまい、
そうして子どもにわかる幼年文学はいまの子どもには幼稚になりすぎてしまい、
結局のところ幼年文学自体が消滅しかかってしまったのですが、
今なら!
そういうなかに音読してやれば使える本がたくさんあるのです。
子どもにも、そうして子ども関係なく、こっそり読む大人にも。



「こぐまくん」の豊かな時間

師匠の赤木かん子さんから、
「おすすめ絵本」の原稿が送られて来たので、
記事をアップしながら、
師匠が書いていることに、ふむふむと共感。

「そうしてこぐまくんは、
 自分が大きくなったことを知り、考え、受け入れ、」

ってあるんだけど、この
「知り、考え、受け入れ」るプロセスと時間が
ほんとに大事だよな、と思いました。


(26)「ちいさなこぐまのちいさなボート」:赤木かん子の「親子で読もう!今どきの絵本のおすすめコーナー」
 → https://marinonnette.at.webry.info/202006/article_3.html?1591680627


この絵本の主人公の「くまくん」は、
自分でボートを作って、それを湖に浮かべて、
一人で工夫して、いろんなことをやって、感じて、味わって、
すごく豊かな濃密な時間をすごしているのね。

自分の時間を、精いっぱい生きているから、
自分の成長を「知り、考え、受け入れ」ることができて、
その上、自分より小さいクマの子に、ボートをゆずってあげることができるんじゃないかな、
と思いました。


ひるがえって、今の子どもたちはどうかな?
「知り、考え、受け入れ」る時間はあるのかな?

自分が子育てしていた頃を考えたら、
「はやく」「さっさと」「ちゃんと」と、子どもを追い立ててた。
普段の生活を回すために、必死だった。

でも、子どもの成長に必要なのは、
自分で試行錯誤して、
「知り、考え、受け入れ」る経験かもしれない。

親がするべきなのは、
子どもの試行錯誤を見守り、
子どもが自分で自分の答えを見つけるのを待つことなのかもしれない。


‥‥なんてことを、
かん子さんの原稿読みながら思いました。


ちいさなこぐまのちいさなボート (はじめてブックシリーズ) - イヴ バンティング, ナンシー カーペンター, Eve Bunting, Nancy Carpenter, ちば しげき
ちいさなこぐまのちいさなボート (はじめてブックシリーズ) - イヴ バンティング, ナンシー カーペンター, Eve Bunting, Nancy Carpenter, ちば しげき

(26)「ちいさなこぐまのちいさなボート」:赤木かん子の「親子で読もう!今どきの絵本のおすすめコーナー」

今日の絵本は、
「ちいさなこぐまのちいさなボート」
(バンディング作 ペンター絵 主婦の友社  2005年)


ちいさなこぐまのちいさなボート (はじめてブックシリーズ) - イヴ バンティング, ナンシー カーペンター, Eve Bunting, Nancy Carpenter, ちば しげき
ちいさなこぐまのちいさなボート (はじめてブックシリーズ) - イヴ バンティング, ナンシー カーペンター, Eve Bunting, Nancy Carpenter, ちば しげき

4、5歳くらいの男の子を主人公に、
その子が大きくなったことを悟る瞬間を描いた絵本て、結構あります。

不思議なことに
女の子を主人公にこのテーマの本はほとんど見たことがないのですが。
女の子は年齢が違うのかな。

大好きだったボートに、今年乗ろうとしたら小さい……。
大好きだったズボンをはこうとしたら小さい……。

そのことから自分が大きくなったことを知る話なので、
同じようなことを感じた男の子がいたら
読んでやって欲しい本です。

感情はありますが、それをどういっていいかわからないとき、
本は役に立ちます。
そうそうそうそう、これなんだよ!
です。

そうしてこぐまくんは、
自分が大きくなったことを知り、考え、受け入れ、
自分のボートをまだ役に立つ小さい子に譲ります。

成長の瞬間をきれいに暖かく切り取った、
子どものいない大人にもいろいろ考え深い一冊です。

地味ですがいい本です。




(25)「ちいさなつきがらす」:赤木かん子の「親子で読もう!今どきの絵本のおすすめコーナー」

今日の絵本は、
「ちいさなつきがらす」
(マーカス・フィスター作  講談社 2010年)


ちいさな つきがらす (講談社の翻訳絵本) - マーカス・フィスター, 谷川 俊太郎
ちいさな つきがらす (講談社の翻訳絵本) - マーカス・フィスター, 谷川 俊太郎

これはいじめの、しかもいじめたがわからのお話です。

若いからすを妬んだ年寄りがらすが、
月にいってこい、という無理難題を言いつけたのですが、
素直で真面目な若いからすは
一生懸命言われた通り飛んで飛んで飛んで……
とうとう力尽きて堕ちてくるのです。

年寄りがらすがどんなに後悔したことか……。
でもいってしまったセリフ、
やってしまった行為は消えない……。

この本物の話を素晴らしく力のある絵が引き締めていて、
これは絵本でしかできない表現です。
いまの一年生なら……。
息を呑んで聞いてくれるでしょう。 






(24)「からすたろう」:赤木かん子の「親子で読もう!今どきの絵本のおすすめコーナー」

今日の絵本は、
「からすたろう」
(八島 太郎・作  偕成社 1979年)


からすたろう - 八島 太郎
からすたろう - 八島 太郎


ある小さな学校の話です。

そこの六年生には、
たぶん知的障害であろう男の子が一人いました。
彼は六年間、何時間もかけて学校に通ってきては
文字もろくすっぽ書けず、座っていました。

なので、村の人たちも子どもたちも、
その子のことは軽んじていたのですが、
新しくきた、若い先生はその子に話しかけ、
何が書いてあるか読めない習字もちゃんと貼りだす人でした。

そうして、村中の人が集まる学校の学芸会で、
その子はカラスの鳴き真似をしてみせたのです。

子どもを探すお母さんカラスや、
喜んだり怒ったりしているカラスの声を……。
それは本当にカラスの声そっくりで、
大人たちはみな感心してしまいました。
カラスが何を言ってるか、わかるような鳴きかただったのです。

その子は山奥で炭を焼き、一生暮らしていくでしょう。
でも、村の人にどことなくバカにされて暮らすのと
(そんなことだと、何かあったときにはスケープゴートにされかねません)
“からすたろう”と呼ばれて丁寧に、うやうやしく扱われて生きるのとでは
天と地ほども違うはずです。
この先生は、この村の中に彼の“居場所”を作ることに成功したのです。

やしまたろう、は、戦時中捕まってひどい目にあわされ、
戦後はアメリカに行って暮らし、
故郷の懐かしい(日本でも失われてしまった)風景の絵本ばかり描いた人でした。

この絵本は
教育には何ができるのか?学校には何ができるのか?
という問いに対する一つの答えです。

なので、いくら時がたっても古くなりません。
そうして、いまの低学年はみんな
悪気はなくとも、この子をそこはかとなくいじめたり
無視したりしていることに気づき、怒るでしょう。

そうして、からすたろうの人の良さを好きになり、
この先生を尊敬するだろうと思います。

今の子は“本物の一冊”が好きなのですから。




(23)「とびきり おかしな マラソンレース」:赤木かん子の「親子で読もう!今どきの絵本のおすすめコーナー」

今日の絵本は、
「とびきり おかしな マラソンレース」
(メーガン・マッカーシー作  光村教育図書 2019年)


とびきりおかしなマラソンレース―1904年セントルイスオリンピック - McCarthy,Meghan, マッカーシー,メーガン, ゆうこ, おびか
とびきりおかしなマラソンレース―1904年セントルイスオリンピック - McCarthy,Meghan, マッカーシー,メーガン, ゆうこ, おびか


1904年の第一回オリンピックマラソンレースのお話です。
(だから本当にあったできごとです)

このとき、いきなりセントルイスに移されたマラソン大会は、
道は整備されていないわ、
気温は30度越えだわ、
給水はされないわ、で
今では考えられないような、珍妙かつ過酷ななレースだったようです。

キューバの天才ランナー、カルバハルなどは、
ストリートでアメリカに行くためのお金を集め、
飲まず食わずでたどり着いたようで、
途中、桃やりんごを勝手に食べていたり、
お医者さんの乗ってる車が崖から落ちたり、
エピソードには事欠かない大会だったそうです。

このとき日本人選手はいなかったので、
日本人がいないものにはいっさい関心のない日本では、
この大会のことを知っている人も少ないでしょう。

ストーリーマンガの存在しないアメリカには、学習マンガもないので、
日本が学習マンガでやっているような情報を絵本で作ります。

こういう“本当にあった話”や“伝記”も絵本で作っているので、
ときどきこういう、へーっ!と思うようなネタの絵本があったりします。

本当にあった話、が好きなお子さんたちには、
そういう絵本を読んでみてください。
案外ウケますよ。