「〈少女小説〉ワンダーランド 明治から平成まで」 

「平成まで」というタイトルを見て、
どんな作品が取り上げられているのか、興味を持ったので読んでみた。
「〈少女小説〉ワンダーランド 明治から平成まで」 菅聡子編 明治書院 2008年

〈少女小説〉ワンダーランド―明治から平成まで


表紙がほどんど真っ白いので、
画像を貼り付けてみたが、面白くない・・ですね。
(実物は、白いカバーの下の英語のタイトルと黒猫のイラストが
 わずかに透けるようになっている)

さて中身だが、期待以上に面白かった。
最初の、吉屋信子大先生の時代からの「歴史」は、
断片的に知っていたことが整理され、勉強になった。

初期の少女雑誌には、
川端康成や菊池寛など文壇のお歴々が
少女向けの作品を書いて人気を博していたことは知っていた。
前々から、おじさんが書く少女小説って面白いのかな?と思っていたが、
それが「良妻賢母教育」の一貫であった、というのは目ウロコ。
その後現れた吉屋信子が、読者の圧倒的な人気を得たのは、
彼女がごく若く、読者の少女に近い視点から「美しいもの」を描いたから。
なるほど。

それって、少女マンガの歴史も同じですね。
初期の少女マンガは、手塚治虫、横山光輝、石ノ森章太郎など、男性作家が書いていたし、
その後、読者の中から次の書き手たち=女性マンガ家がデビューしますもんね。

で、その構図が、戦後のコバルトでも繰り返されているのが、面白い。
富島健夫、津村節子、佐藤愛子など、大人の作家が書いていたのが、
やがて読者から、読者とほとんど同世代の作家が現れ人気になる。
少女による少女のための小説、というわけだ。

「若草物語」「赤毛のアン」「あしながおじさん」などの考察も面白かった。
「あしながおじさん」が女子大を宣伝する小説だったとは!!
20世紀初頭だもんなあ、と思うと同時に、
現代の少子化問題でも、ほどんど同じことが言われているのに呆れた。
おじさんたちは、100年たっても進歩がない。

「少女」は、戦前の女性にとって、
結婚して家族をケアする立場になるまでに許された、
わずかな「モラトリアム」であった、という指摘は興味深い。

近代になって、イギリスで、ハンパな労働力としてではなく、
大人になるまでのモラトリアムとして、保護され教育されるべき存在として
「子ども」が発見されたのと同じように、
「少女」も、近代の産物だったのだ。

個人的には、
斎藤美奈子の「現代文学にみる『少女小説』のミーム」が面白かった。
なにしろ、わたしのご贔屓の美奈子姐さんが、
これまたわたしの大好きな令丈ヒロ子を論じているのだから、嬉しい。
しかし、「若おかみ」がこれほど「赤毛のアン」を踏襲していたとは、驚き。
「みなしご」というキーワードは、切実に現代的だと思った。
(そう言えば、森絵都が「宇宙のみなしご」という名作を書いている)

それから、菅聡子の「私たちの居場所ー氷室冴子論」は、
つい先日亡くなったばかりの氷室冴子へのリスペクトに溢れ、感動的だ。
現在コバルトで活躍中の作家へのアンケートで、
「一番最初に読んだコバルト作品」を聞いたところ、
多くが氷室冴子作品を上げた、というのが印象的だった。

コバルトの編集者田村弥生のインタビューも、
現場の雰囲気が感じられ、大変面白かった。

従来の「少女小説論」は、
吉屋信子「花物語」に始まり、「若草物語」「秘密の花園」「小公子」ときて、
せいぜいが「赤毛のアン」で終わっていて、
わたしより上の世代のおばさま方向け、という感じがして物足りなかったが、
この本は、氷室冴子を丁寧に論じ、
同時代に活躍した久美沙織、新井素子などにも触れ、
さらに、「十二国記」「彩雲国」「マリ見て」に言及し、
「伯爵と妖精」「ビクトリアンローズテイラー」まで出てきたのには驚いた、いや、感動した。

大変面白かったです。
興味のある向きは、是非。

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この記事へのコメント

ルーネット
2008年09月05日 00:00
ほう、ほう
少女小説!
赤毛のアンははまってましたねぇ。彩雲国もそうだけど、なりたい自分を獲得していくプロセスを描くものがツボのような気がします。

あでりさまは、想像するにとっても少女らしい青春時代をすごされていたような気がします。というか、可愛かったんだろうなぁと。
一方、私は、まわりからも「がさつ」「粗忽」「おとこおんな(^^;」といわれ続けた結果、自分のことを少女だと自覚できないまま、気付くとおばさんになっていたという悲しい歴史を背負っており、

最近はまっているのは「ばあさん」もの。
どあつかましく、可愛げがないばあさんが登場する池上永一の本をコレクションしてます。
こっちだと、すんなり自分と重なるのよ!しっくりとくるのがなんだかなぁ。
2008年09月05日 18:34
ルーネットさま、こんにちは!
わたしの少女時代ですか? 掃除をサボろうとする男子を蹴飛ばしては恐れられ、女の子には頼りにされてましたね。わはは。

なになに「ばあさんもの」をコレクションしてるの? そう言いながら、ちゃんと乙女なラノベやファンタジーもお好きなんですよね、ルーネットさまは♪

「彩雲国」の新刊出ませんね~。あ、そうそう来週事務所に伺う時に、荻原先生の新刊、持って行きますね!