半妖というアイデンティティ(犬夜叉・彼方から・すっくと狐)

  *過去の別日記から移動しました(元記事2004年06月09)
高橋留美子作「犬夜叉」について、
この作品の魅力は何だろう、と夫婦でディスカッション。


高橋 留美子



犬夜叉は、妖怪の父と人間の母の間に「半妖」として生まれたので、
妖怪の社会(?)からも、人間の社会からも忌み嫌われ爪弾きにされて育った。
帰属するものがないため孤独であり、
自分の居場所探し・アイデンティティの模索が物語の大きなテーマとなる。

そこから容易に読み取れるのは、
「犬夜叉」の読者であるイワユル思春期の子供達の状況との類似性だ。
子供でもなく、大人でもない中途半端な年頃。
理解されたいという願いと、理解されていないという苛立ち。
仲間は欲しいが、傷つきたくないという恐れ。
そしてまさに思春期は、
自分はどういう人間なのかを考え、アイデンティティの問題に悩み始める時期だ。
犬夜叉の物語は、まさに読者である彼らの物語なのだ。

その上、犬夜叉は強い。
乱暴で単純だが、ともかく「強さ」という解りやすい目標を持ち、実践している。
現実世界ではこうすっきりとはいかないから、マンガとして読んでいて痛快だ。

そして、犬夜叉はかごめちゃんという「居場所」を見つける。
「半妖」である自分を、
そのまま受け入れ好きだと言ってくれる彼女に出会えた犬夜叉は、
妖怪を目指していたときよりも強くなる。(まあ、単純に言えば)

ロジックとしては、そんな感じかなあ。
でも、「犬夜叉」が面白いのは、
メインキャラの絶妙な人物配置とキャラ設定に寄るところが大きいと思うなあ。
弥勒・珊瑚・七宝・雲母/殺生丸・りん・邪見/奈落ご一行様/桔梗/かごめの実家‥‥。
キャラが立ってるから、ほっといても勝手に動いてくれる感じ。
逆に、キャラの性格と違うことをやらせようとすると、
途端に「犬夜叉」じゃなくなってしまう。
映画はオリジナルストーリーなので、そのへんが難しいところかな。
ファンは「犬夜叉」を見に来るんだからね。

さて、
「自分のアイデンティティに苦しむ半妖の男の子が、
そのままの彼を受け入れてくれる女の子と出会って、
さらに強く成長する話」という括りをするなら、
「犬夜叉」とほぼ同じ枠組みのマンガがあるよ、参考に読んでみる?
ということで、わたしが夫に紹介した少女マンガが二つ。

「彼方から」ひかわきょうこ 白泉社




いずれ世界を破壊する邪悪な存在「天上鬼」となる、
と予言されて育った青年イザークと
彼を天上鬼として目覚めさせる存在「目覚め」として
異世界からやってきた少女ノリコとのラブストーリー。
ひかわきょうこの最高傑作。(と、勝手に宣言)
 
むか~し、この人は
取り柄のない女の子が素敵な男の子に見初められて‥
みたいな話を書いていたと記憶しますが、
西部モノのあたりから、
なんかヒロインが良い具合にエンパワメントしてきたなあ、と思っていました。
「彼方から」は本当に傑作です。
ファンタジーとしても、最高の部類に入ると思う。
活字媒体でもこれに匹敵する作品はなかなかないよ。
文句無く、お薦めです。

「すっくと狐」吉川うたた ぶんか社




千年の時間を生きる妖狐である唱(となう)と、
丙午(ひのえうま)生まれの勝ち気な女子高生実花(じっか)とのラブストーリー。
こちらはお狐さまとの恋。
現実世界のはずが、狐はもとより、河童やら鬼やら魑魅魍魎が跋扈する。
実花を守るために戦う唱の強いこと。
実花ちゃんも気が強いけどね。
この世の歪みを背景にしたストーリーは毎回面白かった。

以上、本日のテーマは「半妖というアイデンティティ」でした。
このテーマの話がいろいろヒットするということは、
「そのままのアナタが好きだよ」とみんな言って欲しい、ってことかなあ? 
思春期って、「自分が好き」とはなかなか思えない時期。
だから、誰かに「そのままで好きだよ」と言ってもらって、
それを拠り所にだんだん自分を好きになっていけるんだよね。きっと。